2016.11/20 [Sun]
鬼滅ネタ
多分ワンライで書いたもの。だと思うんですけど、忘れてしまった…すみません。
善ねずですが、禰豆子は出てこないので、これを善ねずと呼んでいいかどうかは微妙かもしれない。
短いです。一発書きです。
ご了承の上どうぞ。
シイイイ、シイイイと闇に音だけが響く。
これは自分の呼吸音だ。
いつもより大きい音なのは、俺が必死に死ぬまいと毒に抵抗しているせい。
善逸は朦朧とする意識の中で、自分の状況をうっすらと把握していた。
頭に浮かぶのは優しくしてくれたじいちゃんの顔。
(いや、優しくもしてくれたけど、それ以上に殴られたかな。ゴンゴンゴンゴン殴ってばかりで。俺馬鹿になるんじゃないかと思ったけど)
でも、それは理不尽な暴力ではなかった。
拳の中に優しさが包まれていたことを、本当は知っていた。
(だって俺聞こえるからね、音)
善逸は音で様々なことを知ることができる。人が嘘を吐いているかどうかも。その人がいい人か悪い人かも。
でも聞こえるからこそ、それに従いたくはなかった。自分の気持ちを大切にしたかった。
だって、周りには自分に優しくしてくれる人なんていなかった。騙し、騙される人たち。笑顔で嘘を吐く人たち。周りにはそんな人ばかりで。
たとえ音が悪い人だと知らせても、もしかしたらいい人なんじゃないかと、信じなければ生きてこられなかった。
(でも、じいちゃんは違ったんだ)
優しくしてくれた。自分を強くしようとしてくれた。心から、そして正面から自分に向かい合ってくれた。
(……ああ、でも)
正面から自分に向かい合って、優しくしてくれた人はまだいたっけ。
善逸の頭に、新しい顔が浮かぶ。
(炭治郎と伊之助、無事かなあ)
竈門炭治郎と嘴平伊之助。少し前に出会った、善逸と同期の鬼殺隊の少年だ。
出会った時、炭治郎からは泣きたくなるような優しい、優しい音がした。
伊之助からは……そんな音はしなかったけれど。
でも三人でしばらく同じ屋敷で暮らして、時々何だか兄弟みたいにも思えて、騒がしいけれど穏やかで、とても、とても楽しい日々だった。今まで経験したことがないほどに。
(……会いたいなあ)
じわりと目に涙が滲む。体を徐々に蝕んでいく蜘蛛の毒は、もうかなりまずいところまで広がっているようだ。手にも足にも力が入らず、二人のところへ行くことなど出来そうにない。
そもそもこの森には二人を、正確には炭治郎が背負っている妹の禰豆子を追ってきたはずなのに。
会う前にこんなことになるなんて。
(禰豆子ちゃん、どうしてるんだろ)
涙で滲んだ視界に、禰豆子の笑顔が浮かぶ。
(……あれ?)
おかしい。彼女の笑顔なんて一度も見たことがないのに。だって彼女はいつも口枷を填めていて。
(でも、見てみたかったなあ)
口枷をしていても禰豆子はとても可愛かった。鬼だとは聞いていたけれど、それでも善逸の知る鬼とは全く違い、愛らしくてキラキラしていた。
そして彼女からも、微かに優しい音がした。途切れそうなほど小さな音だったのは、彼女が鬼になっているせいなのだろうか。
もし彼女が人間に戻れたなら、きっと炭治郎と同じくらい優しい音がする。善逸はそう信じていた。
そんな彼女が笑ったら、きっともっと可愛いだろう。
(守りたかったんだけどなあ……)
もし自分がもっと強ければ、こんなところでくたばらずに、彼女を守りに行けただろうか。
彼女を背負う炭治郎や、突っ走りがちの伊之助も守ることが出来ただろうか。
(……あんなに修行したのにな)
何度も涙を流して、泣いて、泣いて、それでも頑張ってきたのに、一向に強くなれなかった。
流した涙の分だけ強くなれたなら、自分は世界最強の剣士にだってなれていたかもしれないけれど。
現実はそんなことはなく、意識はどんどん霞がかって薄れてゆく。
強くなりたかった。守りたかった。
……もう一度会いたかった。
もうほとんど見えなくなった視界を閉じたとき、善逸の耳に声がした。
「もしもし」
善逸の無事を願って。
無事でいて、無事でいて、無事でいてよお願い。
時間なくて突貫工事すみません。
余裕ができたら推敲してpixivに載せたい。(いつだ)
善ねずですが、禰豆子は出てこないので、これを善ねずと呼んでいいかどうかは微妙かもしれない。
短いです。一発書きです。
ご了承の上どうぞ。
シイイイ、シイイイと闇に音だけが響く。
これは自分の呼吸音だ。
いつもより大きい音なのは、俺が必死に死ぬまいと毒に抵抗しているせい。
善逸は朦朧とする意識の中で、自分の状況をうっすらと把握していた。
頭に浮かぶのは優しくしてくれたじいちゃんの顔。
(いや、優しくもしてくれたけど、それ以上に殴られたかな。ゴンゴンゴンゴン殴ってばかりで。俺馬鹿になるんじゃないかと思ったけど)
でも、それは理不尽な暴力ではなかった。
拳の中に優しさが包まれていたことを、本当は知っていた。
(だって俺聞こえるからね、音)
善逸は音で様々なことを知ることができる。人が嘘を吐いているかどうかも。その人がいい人か悪い人かも。
でも聞こえるからこそ、それに従いたくはなかった。自分の気持ちを大切にしたかった。
だって、周りには自分に優しくしてくれる人なんていなかった。騙し、騙される人たち。笑顔で嘘を吐く人たち。周りにはそんな人ばかりで。
たとえ音が悪い人だと知らせても、もしかしたらいい人なんじゃないかと、信じなければ生きてこられなかった。
(でも、じいちゃんは違ったんだ)
優しくしてくれた。自分を強くしようとしてくれた。心から、そして正面から自分に向かい合ってくれた。
(……ああ、でも)
正面から自分に向かい合って、優しくしてくれた人はまだいたっけ。
善逸の頭に、新しい顔が浮かぶ。
(炭治郎と伊之助、無事かなあ)
竈門炭治郎と嘴平伊之助。少し前に出会った、善逸と同期の鬼殺隊の少年だ。
出会った時、炭治郎からは泣きたくなるような優しい、優しい音がした。
伊之助からは……そんな音はしなかったけれど。
でも三人でしばらく同じ屋敷で暮らして、時々何だか兄弟みたいにも思えて、騒がしいけれど穏やかで、とても、とても楽しい日々だった。今まで経験したことがないほどに。
(……会いたいなあ)
じわりと目に涙が滲む。体を徐々に蝕んでいく蜘蛛の毒は、もうかなりまずいところまで広がっているようだ。手にも足にも力が入らず、二人のところへ行くことなど出来そうにない。
そもそもこの森には二人を、正確には炭治郎が背負っている妹の禰豆子を追ってきたはずなのに。
会う前にこんなことになるなんて。
(禰豆子ちゃん、どうしてるんだろ)
涙で滲んだ視界に、禰豆子の笑顔が浮かぶ。
(……あれ?)
おかしい。彼女の笑顔なんて一度も見たことがないのに。だって彼女はいつも口枷を填めていて。
(でも、見てみたかったなあ)
口枷をしていても禰豆子はとても可愛かった。鬼だとは聞いていたけれど、それでも善逸の知る鬼とは全く違い、愛らしくてキラキラしていた。
そして彼女からも、微かに優しい音がした。途切れそうなほど小さな音だったのは、彼女が鬼になっているせいなのだろうか。
もし彼女が人間に戻れたなら、きっと炭治郎と同じくらい優しい音がする。善逸はそう信じていた。
そんな彼女が笑ったら、きっともっと可愛いだろう。
(守りたかったんだけどなあ……)
もし自分がもっと強ければ、こんなところでくたばらずに、彼女を守りに行けただろうか。
彼女を背負う炭治郎や、突っ走りがちの伊之助も守ることが出来ただろうか。
(……あんなに修行したのにな)
何度も涙を流して、泣いて、泣いて、それでも頑張ってきたのに、一向に強くなれなかった。
流した涙の分だけ強くなれたなら、自分は世界最強の剣士にだってなれていたかもしれないけれど。
現実はそんなことはなく、意識はどんどん霞がかって薄れてゆく。
強くなりたかった。守りたかった。
……もう一度会いたかった。
もうほとんど見えなくなった視界を閉じたとき、善逸の耳に声がした。
「もしもし」
善逸の無事を願って。
無事でいて、無事でいて、無事でいてよお願い。
時間なくて突貫工事すみません。
余裕ができたら推敲してpixivに載せたい。(いつだ)
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