月砂漠 Diary

漫画感想や日常話などのよろず日記です。同人・二次創作要素を含みますのでご注意ください。

久々に書きたくなったので挑戦しました。

【第115回フリーワンライ】

ワンライとは:企画者様のサイトをご参照ください。

使用したお題:隠した言葉
※注意:二次創作NL。 #ロイアイ
#深夜の真剣文字書き60分一本勝負

遅刻しました。すみません。
11時前から始めたけど、やっぱり一時間はかかりますわ。

一発書き。
未推敲。





「どう? 綺麗でしょ?」
 時々話題に出る師匠のお嬢さんがどんな子か見てみたい。
 養母の店で働く女性たちに毎日のようにせがまれて、とうとう根負けした私は、今日彼女をここへ連れてきた。養母が日頃のお礼に食事をご馳走したいと言っていると理由を付けて。
 初めて会う女性たちに囲まれた彼女は戸惑いながらも、私の知り合いだから無碍にも出来ないと思ったのか、愛想笑いを浮かべて対応してくれていた。
 だがあまり長居もさせられない。彼女も居心地が悪かろうと彼女を送ろうとしたとき、女性たちが何を思いついたのか、私に食事場所でもあり仕事場でもあるバーの部屋から出て行けと命令してきた。
 女性は数が集まると何故あんなにも力が出るのだろう。
 あれよあれよという間に押し切られ、入っていいと言われてようやく入室を許された私の目に飛び込んできたのは、カツラを被せられ、顔には丁寧な化粧を施された彼女の姿だった。
「リ、ザ……?」
「そうよお。似合うでしょ?」
「やっぱり女の子だもの。化粧をすると一気に女らしくなるわよねえ?」
「ほら、何か言ってあげなさいよ、ロイ坊ちゃん」
「坊ちゃんって呼ぶのは止めてくれって言ってるだろ」
 軽く睨みながら、チラチラと彼女の姿を横目で見る。まるで別人のような彼女をとても正視出来ない。
 リザの方も恥ずかしいのか、視線を外して頬を染めている。だがそれがまた奥ゆかしさを感じさせて、逆に女性らしさを強調する。
 今まで見てきた彼女は、女性だとは知っていたものの、化粧どころか着飾ったりお洒落をするといった女性らしさとは無縁で、色っぽさなど欠片も感じなかった。歳も離れていたし、妹のようなものだと思っていた。今だってそれは変わらない。
 変わらない……はずなのに。
 目の前にいるのは、まるで別人のように女らしい彼女。まさかこんなに変わるなんて。
「き……」
 綺麗だ、という言葉を口にしかけて、私は唇を引き締めた。
 言ってしまったら、彼女と自分の間に引いた線のようなものが無くなる気がしたのだ。
 師匠の娘と弟子。
 妹のような存在と兄のように接する自分。
 そのくっきりとした境界線が薄れるような、そんな予感が。
「みんなちょっとふざけすぎじゃないのか。マダムも、悪乗りしすぎだよ」
 私は言い掛けた言葉を呑み込んで、少しきつめの口調で言う。
「彼女をもう送っていかなきゃ。師匠も心配されるだろうし。さあ、彼女を元に戻して」
 有無を言わせぬ私の口調に、女性たちはしぶしぶハーイと返事をして、彼女の化粧を取り始めた。

「……なんだかすみません。断れなくて」
 帰り道、何となく会話の糸口が掴めず無言で歩いていた私に、彼女の方が話しかけてきた。
「え? ああ、いや。こっちこそごめんね。ビックリしただろう?」
「いえ……まあ、はい。驚きましたけど、楽しかったです」
 意外な言葉に、彼女の方を見る。
「そう?」
「はい。お化粧なんて未体験でしたし」
 でもやっぱり似合ってませんでしたよね、と彼女は少し俯き加減で苦笑する。
「そんなことないよ」
 思わず否定した私を、彼女は驚いた顔で見上げてきた。
「いや、その」
 綺麗だった、と先程飲み込んだ言葉を口にすべきか一瞬迷う。
「……似合っていたけど、私は普段のリザの方がいいと思うかな。自然で」
 けれどどうしても口に出来ず、私は精一杯その場を取り繕うような言葉を述べた。
 それを聞いた彼女は瞬間目を丸くし、やがて私から視線を外して再び前を向く。
「……そうですか」
 怒ったり気を悪くしているような声ではなかった。
 むしろ表情はどこか嬉しそうにも見えた。
 良かった、と聞こえたような気がしたのは気のせいだっただろうか。

 それからは夕飯の感想や、他愛もない話をしながら彼女を家へと送り届けた。
 彼女の態度はいつもと変わらず、そのことに私は安堵した。やはり言わずに良かったのだと心で確信しながら。
 今思えば、自分の感情にあの頃から必死に蓋をしようとしていたのかもしれない。
 見えないように。気付かないように。
 それは決して気付いてはいけないものだったから。


 結局二十年以上たった今、彼女が呆れるほどその言葉を何度も彼女に言うようになるのだが、そんなこと当時の私には知る由もない話だった。
2016.10.22 23:54 | ロイアイ | トラックバック(-) | コメント(0) |












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