ワンライ二回目

今週もワンライに挑戦です!
目指せ甘いロイアイ。

ワンライとは:企画者様のサイトをご参照ください。

使用したお題:虫の音 軍人(「夏は遠い」は「夏の終わり」に変換して使用)虫の音も「虫の声」に変換してます。
ジャンル:鋼錬 #ロイアイ。
※注意事項:二次創作NL。軽いイチャイチャあり。
#深夜の真剣文字書き60分一本勝負

推敲は出来ていません。
それでも宜しければ追記からどうぞ。
(後から多少修正を加えることはあり得ます)

※ワンライネタ。一発書きです。





 仕事を終えて、帰途に着く。
 少し遅れて、准将が後を付いてくる。
 今日の目的地は同じ、私の家だ。
 夜中に部下の、しかも女性の部下の家を訪ねている、という噂が立てば面倒なことになるため、どちらかの家に行く時は、途中から別々のルートを歩くことになっている。それが私たちの決まり事だった。

 先に家に着いて着替えていると、ベルが鳴った。
「やあ」
「お疲れ様でした」
 ドアを開けて微笑む顔に、今日一日の仕事に対する労いの言葉を掛ける。准将はうん、お邪魔するよと言いながら中に入ってきた。
「先に食事にされますか?」
「そうだなあ」
 准将が軍服を脱いで、ラフなシャツ一枚になる。
 と同時に、今までどこか緊張感を伴っていた軍人の顔が消え、くつろいだような緩やかな表情に変わった。
 この瞬間が、とても好きだ。
 軍人ではなく、一個人として。
 ロイ・マスタングとしての表情が見られる貴重な瞬間。
 職場では決して見ることの出来ない、この人の素顔。
 准将という立場である以上、それ相応の顔を造らねばならない。それはどれほど骨の折れる仕事だろうか。山積みになっている書類よりも、日々増えていく任務よりも、実際一番大変なのは、准将としての立ち居振る舞いの方なのかもしれない。
 そんな仮面を、私の家では脱ぐことが出来る。造らなくてもいい、素顔でいられる。
 それが嬉しい。
 他の女性の前でもこんな顔を見せたことはあるのかもしれない。
 でもそれでもいい。今、特別でいられるならそれでいい。
 否、別に特別になりたいわけではない。
 ただ、この人がくつろぐ場所を作ることが出来ている。
 それだけで自分がこの人の傍にいる意義がある気がして、そのことがとても嬉しいのだ。

 目を少し細めて、ベッドに座りながらブラックハヤテ号の相手をしてくれている准将を見ていると、不意に顔を上げた准将と視線がぶつかった。
 慌てて目を逸らし、夕食の準備の続きに取りかかる。
 すると背後に気配を感じた。
「准将?」
 振り向くと、後ろから抱き締められて、軽いキスを唇に落とされた。
「あの……準備出来ないんですけど」
「いいだろう、少しくらい」
 准将は嬉しそうに笑っている。何がそんなに嬉しかったのだろう。
「こっちに構うより、ブラックハヤテ号を構ってやってください。ここにいられては準備が滞ります」
「はいはい」
 准将はあっさりと引き下がると、少し離れた位置でこちらを見守っているブラックハヤテ号のところへ戻ると、また相手をし始めた。
 軽く息を吐いて、鍋を火にかけるために窓を開ける。
 すると涼しい風と共に、虫の声が微かに聞こえた。
「もう秋ですね」
「ん? そうだな」
 夏ももう終わる。
 そのうち軍服も夏用から冬用に変わるのだろう。
 ほんの少しの感傷を覚えながら、私は愛犬と戯れる准将を背に、夕食の準備を再開させた。


 * * *


 仕事を終えて、帰途に着く。
 途中からいつも家に帰る時に通る道とは違う道を歩く。
 今日は明日が非番のため、彼女の家に行くことになった。
 そんな時は、一緒に帰るわけにもいかないので、別々の道を歩くことにしている。私たちの関係を周囲に気取られない為の策だった。
 面倒ではあるが、仕方がない。噂になれば、自分と彼女の上司と部下という立場が崩れる可能性があるのだ。納得はいかないが、割り切るしかなかった。

 彼女の家に着いてベルを鳴らす。
「やあ」
「お疲れ様でした」
 開いたドアの中から、彼女が労いの言葉を掛けてくれた。
 その微笑みに癒される。ここに来て、ようやく今日の仕事が終わった、という気分だった。

 お邪魔するよ、と一声掛けて中に入ると、彼女が訊ねてきた。
「先に食事にされますか?」
「そうだなあ」
 そうするよ、と返しながら軍服を脱いで、ラフなシャツ一枚になる。
 と同時に、どっと解放感が押し寄せた。
 自分の家でもないのに解放感と言うのも変な話かもしれないが、事実彼女の家は落ち着く。ある意味、自分の家よりも落ち着くかもしれない。それは彼女がいるおかげだろうか。

 私がベッドに腰掛ける時を待っていたかのように、ブラックハヤテ号が尻尾を振りながら近付いてくる。相手をしてほしいのだろう。
 リクエストに応えて相手をしていると、キッチンの方から視線を感じた。
 顔を上げると、こちらを見ている彼女と目が合った。
 嬉しそうに微笑んでいる、女性らしい顔。
 どこかくつろいだような、穏やかな表情。
 彼女のその顔が、とても好きだ。
 普段職場では決して見ることの出来ない、彼女の素顔。
 軍服を着ている時は毅然とした態度で軍人として振る舞っている彼女も、私の前ではリザ・ホークアイという一個人としての顔を見せてくれる。
 それが嬉しかった。
 私の補佐であるという立場上、彼女はきっと、多少なりとも無理をして、背を正し、軍人らしく在ろうと振る舞ってくれているのだろう。
 そうさせているのは私だが、実際彼女は仕事上でも無くてはならないパートナーだ。失うわけにはいかない。
 だがプライベートでも、彼女はかけがえのないパートナーだ。
 だからこそ、職場で被っている仮面を、私の前では脱いでくれことが嬉しかった。
 せめて私の前では、造らず、素顔でいてほしい。
 彼女のそんな顔が見られるからこそ、この場所が、彼女の傍が、一番安らげるのかもしれない。

 そう思うと、不意に愛しさが押し寄せてきた。
 気持ちの赴くままに彼女に近付き、後ろから抱き締める。
 振り向いた唇に軽いキスを落とすと、抗議の目を向けられた。
「あの……準備出来ないんですけど」
「いいだろう、少しくらい」
 嬉しそうに笑う私に、彼女がピシャリと言い放つ。
「こっちに構うより、ブラックハヤテ号を構ってやってください。ここにいられては準備が滞ります」
「はいはい」
 これ以上しつこくしたら、本気で怒らせかねない。
 あっさりと引き下がった私は、少し離れた位置でこちらを見守っているブラックハヤテ号のところへ戻る。
 じゃれてくるブラックハヤテ号の相手をしていると、一筋の涼しい風が吹いた。
「もう秋ですね」
 窓を開けて呟く彼女に、相槌を打つ。
「ん? そうだな」
 そうか。もう夏も終わりなんだな。
 これから少しずつ寒さも増していくのだろう。
 そうなれば夏よりも、きっと身体を寄せ合う機会も増えるだろう。
(今までは暑いからと拒否されたこともあったからな。それももう終わりだ)
 にやりと口角を上げた後、その顔を見られたのではないかと慌てて彼女の方を見る。彼女は背中を見せたまま、こちらを向いた気配はなかった。
 ホッと安堵し、ブラックハヤテ号の相手を続ける。
 開いた窓から、小さな虫の声が聞こえた。



23:25終了。

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