夢を見た

夢を見ました。



一人のお爺さんの家がある。
古い日本家屋で、私はそこに出入りしていた。
どうやら以前、そのお爺さんに切り絵関係の何かを教えてもらったことがあるらしい。
お爺さんはとても偏屈で、最初はなかなか教えてくれようとしなかった。
私は無理に頼み込んで、お爺さんに強引に少しだけだけどやり方を教えてもらった。

そのお爺さんは普段から偏屈だから、あまり人前に姿を見せなかった。
どうしているかなと思いつつ出入りしていた私は、ある日その家の部屋に置かれた染物に目を留める。
その染物は、それはもう本当に色鮮やかで、美しかった。
図柄は切り絵を応用したような柄だった気がする。
柄だけではなく、色がとにかく絶妙だった。
魅せられた私は、再びお爺さんに教えてもらおうとお爺さんを捜した。
しかし家のどこにもお爺さんは見当たらない。
必死に捜していると、奥の奥にある薄明かりの入る小さな部屋で、やっと見つけることが出来た。
けれど、話は出来なかった。
お爺さんはベッドに横になっていた。
あの染物を教えて欲しいのだと訴える私に、お爺さんは目を開けて私を見てはくれたけれど、何も喋らなかった。
お爺さんはこんなところにまで来てしょうがない奴だという顔をして、私に一通の手紙を見せた。

私はどうやら、お爺さんに自分の作った作品を送っていたらしい。
お爺さんはそれが嬉しかったそうだ。
拙いけれど一生懸命作っていることが伝わる私の作品を見るのが楽しかった。
自分の教えたことがこうして誰かに伝わっているのが嬉しい。
私の成長を見るのが楽しかったと書いてあった。

しかし手紙には続きがあった。
お爺さんの命は、もう秋までもたないらしい。
夏が終わる頃お爺さんの命も終わるのだと言われたそうだ。
染物を教えたくても、お爺さんにはもう時間がなかった。
教えてくれる体力も、もう残ってはいなかった。

私は声を上げて泣いた。
窓から射し込む光が眩しくて、お爺さんの笑顔も眩しくて、だけどとてもとても悲しかった。


夢から覚めてもやっぱり泣いていた。
お爺さんはずっと微笑んでいて、それがひどく悲しかった。
いったいこの夢はなんだったんだろう。
前に一度見た夢の続きだった気がするんだけど。
その時私はお爺さんに切り絵関係の何かを教えてもらったんだろうか。
切り絵じゃなかったかもしれない。でも手作業の何かだったと記憶している。


私が大切だと思えば思うほど、その人は私から遠ざかる。
どうして私はその人と別れなければならないんだろう。
大好きなのに、どうして諦めなければならないんだろう。
どうしてこんなにも好きだと思っているのに、私はまた独りになってしまうんだろう。


なんだかとても寂しい、残暑の夢だった。

随分涼しくなってきましたね。


毎日毎日、どうしてあの幸せを失ってしまったんだろうと考えているからいけないのかな。
もう戻りはしないし、全て自業自得のはずなのに。
私が思い出して胸を痛める分、やっぱり相手も私の顔なんて見たくないと思っているんだろうか。
それとももうどうでもいいと思ってくれているんだろうか。
傷つけた相手が傷つけられた相手のことを何とも思っていないというのは嘘だと思う。
じゃあ昔々、私のことを蔑んだ人達は、私のことなんてもう覚えていないんだろうか。

過去は過去として昇華してしまえればいいんだけれど、それは本当にとても難しい。
今の幸せを逃したくなくて頑張ってるつもりなのに、記憶は容赦なく蘇ってくるのがどーしよーもない。
取り返しのつかないことをした時って、本当にどうすれば先へ進めるんだろう。

テーマ : ひとりごとのようなもの
ジャンル : 日記

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氷上和奇

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